フィリピンと山あれこれ(9)


 フィリピンでは5月10日投票の統一選挙戦がスタートし、3ヶ月に渡る戦いの火蓋が切られました。昨年封切られたフィリピン映画にも、地方選挙のすさまじさ、骨肉の争いが、相手陣営への襲撃、投票用紙を焼き捨てる場面や、候補者自身が自衛のために相手を撃ち殺す場面などに描かれていました。政治家は「やくざ」の親分。選挙は、子分の生活をかけた出入り抗争なのです。脅し、供応何のその。時には、勇み肌の子分の鉄砲玉で相手候補が射殺される事態にもなります。選挙期間中の死者数百人。まさに、命を懸けた戦いなのです。

(1)バトゥラオ山・ルソン島中部(820m):1/5万図(Mendez)タール湖の西に位置するバトゥラオ山は、標高こそ低いものの、その櫛の歯のように尖った山頂は独特の雰囲気を漂わせている。また、長く尾を引いた裾野はタール湖の外輪山につながり、山頂近くまで迫る耕作地は、この山が地元の人々に豊かな恵みをもたらす開けた山であることを示している。

 マニラから、サウスハイウェーを30分ほど南下し、サウスウッドICというゴルフ場の名前そのままのインターで下りる。去年、タール湖へ行ったときには、まだなかった新しいインターを下りると、そのままゴルフ場の中を迂回する曲がりくねった道が続く。国道に出ると急に車の数が多くなるが、坂を上がったところで左折し、間道に入る。所々に「カビテ軽工業団地」の表示を見るが、それらしきものもなく、殺風景な田園地帯や丘陵を抜け、再び国道に合流するとシランの町である。ここから、ひと登りで、突き当たりの丁字路を右に曲がれば、タール湖を望む外輪山の上に出る。しばらく外輪山に沿った道が続き、右手には緑の草原の上に別荘地などが広がる。いいかげん走ったところで、登山口を通り過ぎたことに気づき、道を引き返す。

 タガイタイから下る道が左にレメリへの道を分けると、「Welcome to Nasugbu」と書かれた看板をくぐる。この先の左手に、「ドン・ボスコ別荘地」とあるのが登山口である。入口の守衛に事務所で登録するようにいわれるが、それらしきものもなくうろうろしていると、海の家のような東屋から銃を構えた警備員が出てきてここに名前を書けという。別荘地といっても、大きな宿泊用の建物があるだけで、閑散としている。さらに進むと、急に道が未舗装になり、馬を連れた男たちがたむろしている。あたりは、耕作地と農家が点在する丘陵地となり、急なアップダウンの連続となる。牛を引く農婦を追
い越したところで道は終わり、「カイラワイII小学校」と屋根に書かれた建物がある。ここで、車を降り、左手の坂道を登る。すぐに下り坂となり畑や農家の軒先を通ると村人が好奇の目を向けてくる。しばらく尾根上の平坦な道をたどり小ピークを越えると、目の前にバトゥラオ山がその奇怪な姿を現した。

 あたりには背の高い草が生い茂り、ようやく山道らしくなったと思ったのもつかの間、目の前に「熊が」と見ると、大きな牛が2頭道をふさぐように寝ている。なんとか道をゆずってもらい、さらに進むと、再び小ピークの手前で道が分かれている。最初は左に畑の縁を迂回する道がついている。次は、尾根沿いに道が上っているが途中で消えている。最後の右にトラバース気味な道を進むと、しだいに下りになり、ふもとの農家に続いているようだ。だいぶ下ってから間違いに気づき登り返す。今度は、間違いのないように尾根沿いの道を登りだすが、しだいに藪が深くなる。ひとつピークを越えたところで、大きな岩があり、その上で一休みする。どうやらこれも違うようだが、ここで引き返すのもしゃくなので、とりあえず目の前のピークに登ることにする。すっかり背の高い藪に覆われた道をたどり、ピークに立つと、目の前の意外と近くにバトゥラオ山の頂上があった。道さえあれば、あと1時間もかからないだろう。しかしながら、ここから見る頂上の右稜線には道がない上、ところどころに岩が突き出していて手ごわそうだ。それに比べて、左の稜線はなだらかで、稜線の下のほうには道らしきものも見える。後ろを振り返ると、はるかタール湖の外輪山までなだらかな丘陵地が広がっている。なんだか、気持ちが大きくなってくるような雄大な眺めだった。

 さて、正しい山道は、最初の左に畑の縁を迂回する道だったようです。小さな尾根を乗っ越し、沢を渡って、山頂左の稜線に取り付くのが正解のようです。再度挑戦したいものです。

参考までに、関連するホームページを挙げます。
@http://www.stormpages.com/mysticwaters/batulao/batulao.html

[コースタイム]
マニラ 7:20−サウスウッドIC 7:45−シラン 8:20−タガイタイ 8:45−別荘地入口 9:45−カイラワイII 10:10−分岐 10:50−ピーク 11:25〜11:55−カイラワイII 12:55−タガイタイ 13:30−シラン 13:55−サウスウッドIC 14:30−マニラ 15:30(Nov.29, 2003)

(2)フィリピンの政治家
 下院と上院の同意が得られず来年度予算が不成立。来年度予算は、今年度予算の内容を変えずそのまま流用することになった。下院議長は、その方が支出を抑えられると主張するが、予算総額は増えたものの、公共事業が大幅に削られた来年度予算に、ただでさえ足りない選挙対策費用が賄えないと危惧した者の差し金ともいわれている。せっかく審議した予算を流し、選挙に狂奔する政治家たちを見ていると、この国に真に国民のためを思う政治家がいるのかどうか疑わしい。

@政治家は世襲制
 多選の禁じられている首長選挙でも、奥さん、こどもを後釜に据えて長期政権を維持する。あるいは、一族の間で政権をたらい回しする。この国では、よくあるパターンです。これも、地元の有力者=政治家で、富と権力が一部の階級に集中しているからこそ可能なのです。時には、一族の内紛の結果、前知事と元知事が骨肉の争いを繰り広げることもありますが、政策論争そっちのけの非難中傷合戦になってしまい、本当の意味での政権交代はありません。もともと利権に関係のない一般庶民にとっては、誰が当選しても世の中は変わらないということになります。
A選挙は人気投票
 現在、上院の議席を占めているのは、バスケットボールのスター選手、映画俳優、コメディアンにニュースキャスター、、、。どうせ変わり映えがしないのなら、自分の投票した有名スターが議席を占めるのを見たほうがいい。少なくとも、彼らは汚職にまみれてはいない。何もしない議員。(何もできない議員)の方が、まだましということでしょうか。
現職のアロヨ大統領に対抗する野党統一候補は、もと映画俳優のポー氏。いままで政治の世界に足を踏み入れたことのない彼を支持するのは、これも日の当たらないところにいる一般大衆、しかし後押しするのは、彼の政治経験がないのをいいことに、当選後の政権操縦をたくらむ老練な政治家たちだ。
Bそして誰もいなくなった
 なにごとにもコネの支配する階級社会のフィリピンで、大学を出たけれど仕事につけない人間がゴロゴロしている。カトリックで避妊を禁じられ子供の数が多い農村では、それこそ、土地が、仕事がなくなっていく。総人口の約1割に当たる800万人を海外に出稼ぎに送り出す国などそうざらにはない。しかも、医者が看護士に、先生がメイドに姿をやつして行くのである。彼らの海外送金が国をうるおすと、誇らしげに語り、出稼ぎを奨励する前に、やるべきことはいくらでもあると思うのですが。
国は栄え、国中から人は消えたという日が来ないことを祈るばかりです。

追伸
さて、あなたはフィリピンをどう思いますか。−どうしようもなくいい加減な国。いつまでたっても変わらない国。なんでもありのつごうのいい国。とりあえず、金持ちには天国、貧乏人には地獄というところでしょうか。ただし、地獄でも明るく暮らせるのがフィリピン人です。

E-mail: tepscom@info.com.ph

ライン