フィリピンと山あれこれ(4)

フィリピンの新聞にも、山の話題が載ることがある。

一般的な観光案内を別にしても、最近の記事のタイトルを並べると、「マキリン山森林保護区が周辺地域の開発によって脅かされている」「地元登山者団体が東ミンドロ州の高峰(ハルコン山)の登山制限を求める」「カンラオン山の火山灰噴出に伴い半径4km以内の立入り禁止」「環境保護専門家がバナハウ山のリハビリテーションのため立入り禁止を検討中」などです。

登山制限とは言うものの、3月4月の2ヶ月間で600名の登山者があったという程度なのですが、それでも登山道の拡巾や侵食が心配されています。

(1)マキリン山・ルソン島中部(1144m):1/5万図(Calamba)その1

その昔、マリア・マキリンという若く美しい魔女が山の麓に住んでおり、森で取れる獣や果物を惜しげもなく人々に分け与えていたそうです。ある日、森に迷い込んだ狩人と恋に落ちた彼女は、その帰りを待ちました。しかし、狩人は人間の女と結婚してしまい、傷ついた彼女は、もう人間を信じることなく、森から獣や果物を消し、どこかへ行ってしまったそうです。

現在のマキリン山は、山中にある泥温泉を除いては火山の跡もなく、全山が森林に覆われています。麓のフィリピン大学ロス・バニョス校(University of the Philippines Los Banos)の敷地は広大で、森の中に点在する校舎や宿舎、歴史博物館やラン庭園をはじめ、周囲には演習林や絵画センター、森林公園まであります。大学のキャンパスがそのまま山につながっているそんな感じです。また、公園内にはキャンプ場もあって、近隣の高校生たちが野外活動をしていました。

マニラからサウスハイウェーを1時間南下すると、終点のカランバだ。ぷっつり切れたハイウェーの先には半分雲に隠れたマキリン山が立ちはだかっている。すぐにカランバの町に入ると、スーパーや映画館などがあり、けっこう大きな町で渋滞もかなりなものだ。右折表示に従い、ロス・バニョスへの道に入ると多少は車が走るようになり、右手にマキリン山が迫ってくる。中腹には大きな屋根や給水塔などが見え、すぐにも山へ取り付くかと思うと、大きく左に回りこむようにしてロス・バニョスの町へと入り、またまた渋滞につかまってしまう。

なかなかフィリピン大学(UPLB)の表示がなく、思わず道脇の女性に聞くと「すぐ先を右に曲がるように」と答えた。なるほど、右に曲がるとすぐに大学の正門があり、入場料5ペソ(約10円)を払って校内に入る。運転手が、「さっきの女性は美人だったな。」と言ってくる。「何をのんきなことを言って、代わりに道を聞いてやっただけじゃないか。」と思わず言いそうになる。この運転手、道を尋ねようとしない欠点があり、これがたたることになる。

校内は広々していて、道なりに進むと左右に農家が現れる。校内を通り抜け山の中へ入ったようだ。左手に絵画センターの入り口を見送ると、鬱蒼とした木々に覆われた石段があり、近くにキャンプ場もあって高校生が大勢いる。ここが登山口と検討をつけ、登り出すとすぐにまた、車道に出てしまった。運転手に携帯で連絡し、車道を登ってくるように言うが、なかなか現れない。とにかく車道を登っていくと休憩所があり、聞くと「ここからマキリン山へは登れない」と言う。結局、先程の絵画センター入り口まで戻り、車を見つけるとともに、警備員に登山口を確認した。1時間以上のロスだ。

マキリン山の登山口は、林産学部(College of Forestry)の奥にあり、林道の入り口には案内所まであって管理人がいる。運転手と二人で10ペソの入山料を払い記帳する。林道はかなり荒れており、いすずのピックアップでも車体をすりそうになる。途中には簡単な作りの売店があって、水やスナックを売っている。キャンプ場もあって、泥温泉への道が分かれている。この先、林道はさらに狭くなり、最後の農家の庭先で車は進めなくなる。時刻は、すでに11時半。ちょっと遅いが、歩き出す。

[コースタイム]

マニラ 7:30−カランバ 8:30−ロス・バニョス 9:00−UPLB 9:30−林道入り口 11:00−林道終点 11:25(Oct.4, 2003)

(2)フィリピンの新聞

フィリピン(マニラ近辺)の有力紙としては、「インクワイアラー」「スター」「マニラブリティン」などが挙げられます。これらは、いずれも英字紙で、タガログ語の新聞はせいぜいタブロイド紙(日本で言えば「夕刊フジ」でしょうか)しかありません。前回にも述べたように、この世界でも英語が幅を利かせています。ただし、内容はどこも似たりよったりで、大統領夫(アロヨ大統領は女性なので、ファーストジェントルマンという)の不倫疑惑の証拠と称する写真や、元大統領の娘(クリス・アキノさんというTVタレント)のセクハラ訴訟(相手は、元映画俳優のパラニャーケ市長で両者は同棲していた)が一面を飾ることもあります。

日本と同じように求人や死亡広告も載るのですが、これが大きな写真つきで、「親愛なるおばあちゃんの一周忌を記念して」とかいうのはやりすぎの気もします。また、日本ではあり得ないものに、解雇広告というものがあります。これも写真つきで、「ここに載せた丸山凸夫は、10月1日をもって当社を解雇されました。以後当社とは何の関わりもありません。」というものです。この国にはプライバシーがないのか。それとも解雇など日常茶飯事で恥ずべきことでもないのか。

しかしながら、近い将来、日本の新聞にも登場するのではないでしょうか。いわく、「この者、当月10日をもって医師免許を剥奪されました。以後の受診はお控えください。」とか、「この秘書は、先月20日をもって当議員事務所を解雇されました。以後の斡旋行為につきまして当事務所は一切関わりません。」

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