No.17-4769
北ア・裏銀から深奥部・笠ヶ岳・新穂高温泉へ 8月11日〜15日
L相原(渉外) SL石橋(会計) 加藤(記録) 大石(食料)
[北ア深奥部]
昨年(2016年)6月上旬三股から常念・蝶を周回した際、常念岳頂上から残雪に輝く水晶岳・鷲羽岳が目に焼き付いたこと、立山から槍・穂高を縦走した40年以上前に何時の日か雲ノ平・高天原を訪れてみたいと想っていたことから、笠ヶ岳も含めて計画した。標準的なコースタイムは1日目から5日目は、それぞれ7h・10.5h・9h・9h・6hであるが5日間で歩けそうだ。石橋さんが何度か裏銀方面の誘いをされていたのと大石さんの夏山への想いを聞いていたのでお二人に声を掛け、加藤さんも応えてくれたのでメンバーは4人と決まった。
[コース概要] 4泊5日テント山行
一日目(8/11)
高瀬ダム→ブナ立尾根→烏帽子小屋→烏帽子岳往復→烏帽子小屋T(テント場)
二日目(8/12)
同T→野口五郎岳→水晶岳往復・水晶小屋→岩苔乗越→高天原山荘
三日目(8/13)
高天原→高天原峠→雲ノ平→黒部源流→鷲羽岳往復・三俣山荘T
四日目(8/14)
同T→三俣蓮華岳→双六小屋→笠新道分岐(抜戸岳)→笠ヶ岳往復・笠ヶ岳山荘T
五日目(8/15)
同T→笠新道分岐→林道→新穂高温泉
[アプローチ]
車2台(加藤車:都内組、相原車)を使用、加藤車をアルピコ交通松本インター前駐車場に置き、相原車にて大町へ向かいアルプス第一交通の駐車場に置く。アルプス第一交通の駐車場は、同タクシー利用者は無料で駐車場を利用することが出来る。また、アルピコ交通松本インター前駐車場(200台)については、アルピコ交通とその共同運行会社の高速バス利用者は1日300円で利用できるため、新穂高温泉から松本方面行直通バス利用者も利用可能。
[一日目] 晴ときどき曇り
高瀬ダム5:50…ブナ立尾根登山口6:20…三角点9:40…11:23烏帽子小屋11:55…12:58烏帽子岳…14:57烏帽子小屋テント場
今回は中高年者だけなので、お金を掛けても体力はセーブしようと前日の10日午後発とし、信濃大町駅近くの竹乃屋旅館に宿泊した。
タクシーに乗車し七倉派出所に登山計画書を提出、ロックフィル式の高瀬ダム堰堤をジグザグに上って行く。此処は40年前の北鎌尾根のスタート地点で高瀬川右岸を湯俣温泉に向けて歩いたはずだが、ダムの型式は覚えているがその他のことは思い出せない。ダムの堰堤上はタクシーから降りた登山者で賑わっているが、若者グループが目立ち我々のような中高年グループは少ない。今日の天気は曇りがち、初日の上りには上々の天気だ。
高瀬ダム堰堤上をスタート ブナ立尾根はここから始まる
トンネルを抜けて吊り橋を渡り、キャンプ地脇を経て沢沿いに進むといよいよブナ立尾根の取付だ。このところ、重い荷とは縁遠く不安だが何とかなるだろう。この一週間で近くの金ヶ岳、権現岳を歩いて身体を山に慣れさせた。七倉ゲートは5時半に開くので我々は先頭から4,5番手か。急な勾配に汗が噴き出す。若者グループには次々と抜かれる。烏帽子小屋のテント場では小屋に近い良い位置を取りたい思いもあり、多少気持ちが焦る。
パーティーの調子もまずまずなので、一人先行することにした。自分のペースで歩くとついつい早くなってしまうので、他のパーティーに合わせて進む。三角点からは幾分勾配も緩くなり先行者も少なくなったのでペースを上げる。烏帽子小屋には10時20分、テント場には10時25分に到着し、小屋に一番近い場所を確保できた。待つこと小一時間で本隊も到着、烏帽子岳の往復へ。尖塔状の烏帽子岳の頂上まで登り、その先の四十八池の近くにテントを張れたらどんなに素敵かと想像した。
烏帽子小屋テント場にエスパースを設営 烏帽子岳をバックに
夏山のテント山行は何年ぶりだろう?午後の時間がゆったりと流れる。明るい外での食事は、お隣さんとも会話が弾み、大石さんが準備してくれたオクラ・玉ねぎ・ベーコン炒めとハムステーキを当てして乾杯。夜半20時から22時に掛けて大粒の雨がテントを叩く。
[二日目] 曇りときどき晴
烏帽子小屋テント場4:40…三ッ岳分岐5:48…野口五郎小屋7:47…8:02野口五郎岳8:10…竹村新道分岐8:43…水晶小屋11:09…水晶岳12:09…水晶小屋13:05…ワリモ北分岐13:31…岩苔乗越13:40…岩苔小谷右岸…16:00高天原山荘16:40…温泉へ…17:50同山荘
昨夜の雨は加藤さんが購入してくれた新しいフライのお陰で雨漏りはなかった。お隣さんも3時前に起きて早々に出発。今日は一番の長丁場、水晶小屋を越えて岩苔小谷を下り高天原山荘まで、コースタイムでは10時間以上なので、後半の下りは転倒に気を付けなければならない。
ヒョウタン池から上りが始まる。テント場は満幕だったようで、池の周辺にも張られている。三ッ岳の上りはコマクサが沢山咲いており和ませてくれる。槍ヶ岳の穂先も現れて気分は高揚、北アルプスはこうでなくちゃ。我々とほぼ同時にスタートした12,3人のパーティーと相前後して歩くが、大人数のパーティーの後はどうしても遅れるので、彼らより先行して歩く。
三ッ岳目指して裏銀縦走路を歩く 稚児車(チングルマ)
槍が出たぞ! 野口五郎岳の手前で虹が出現
竹村新道分岐を過ぎると五郎池を右下に見るが、尾根が痩せてきて少し緊張させられる。東山乗越を過ぎると急登となり水晶小屋に到着。小屋の前は大混雑、今日は布団2枚に5人が寝る模様。水晶岳は初めてなので期待していたが、登山者が多いことにガッカリ。狭い山頂から離れない者が多く、山では譲り合いの精神が大切と思うが此処ではそうした方々は少なかった。
水晶小屋に戻りあとは岩苔乗越へ出て、高天原まで下るだけだ。岩苔乗越からは黒部源流方面へ向かう登山者が殆どで、我々のように岩苔小谷へ向かう登山者は一人見ただけ、どんなコースなのかが不安だ。2時間半で行き着くか。
野口五郎岳にて タカネシオガマ アオノツガザクラ
高嶺塩竃(紫色)と青の栂桜(クリーム色)
岩苔乗越から初めのうちは藪っぽい箇所や徒渉もありで先行きが心配だ。意図してか初めのうちは刈り払いがされてなく、途中から歩きやすくなる登山コースが多い。私が住む八ヶ岳の東面などでも真教寺尾根・県界尾根などは、出だしは余り刈り払いがされてなくて藪っぽいが、途中からは丁寧に刈り払いされている。その程度の藪で撤退する登山者は帰ってくれと言っているようだ。ここも同様で途中からは確りとした刈り払いがされており、皆さんの頑張りでコースタイムよりも短時間で歩けた。
岩苔乗越から岩苔小谷へ 原生林のなかの瞳
高天原
高天原山荘は近年改築され収容人数も50人に増えたが今日はお盆休みの最盛期、1畳に二人とのこと。寝床を二階に確保して温泉に向かう。加藤さんが疲れからか行きたがらなかったが、大石さんに諭されて行くことにした。大石さんは小屋掛けがある女性風呂、我々男性3人は露天風呂に入った。温泉は本当に気持ちいい、汗まみれだったが嘘のようにサッパリした。
温泉へ向かう 最高のひととき
寝床は心配したように一人分のスペースが狭く、なかなか寝付けない。水を補給しに外の水道へ行った際、テラスのテーブルの上にシュラフを広げることを思いつく。雨が降ってくることが不安だったが、2階で縮こまっているよりは身体を伸ばせた。
[三日目] 晴ときどき曇り
高天原山荘5:05…高天原峠分岐5:16…高天原峠6:09…奥スイス庭園7:20…雲ノ平山荘8:28…8:55スイス庭園9:30…黒部源流渡渉点11:24…源流碑11:37…三俣山荘テン場12:45(水場前)12:55…(L
SLは鷲羽岳往復2h30)…C帰着15:36…三俣山荘展望食堂で夕食16:57,17:17
高天原からは高天原峠まではダラダラと上るが、峠から雲ノ平までの上り特に最後の方は梯子や木の根を掴むような急登だった。途中雲ノ平から高天原へ下りて来る若い人からお年寄りまで20数組の人たちと出会った。それぞれに温泉を楽しみにしているようだったが、温泉の楽しみと帰りの上り返しの辛さを考えると簡単には薦められない。
高天原山荘をバックに ワタスゲの池塘を縫って高天原峠へ
雲ノ平の最初の一角奥スイス庭園に到着、今日は快晴で薬師岳、太郎平小屋も望まれる。雲ノ平は祖父岳の溶岩流が生んだ標高2500m前後の高原台地だが、登山道には概ね木道も整備され歩きやすい。北アルプスにこのような穏やかな高原があることは有り難い。とは言え、木道が整備された箇所ばかりではなく、奥スイス庭園から雲ノ平山荘へ至る区間には木道はなく、普段山歩きをしない方は相当苦労すると思われる。
奥スイス庭園が間近に 薬師岳を背に雲ノ平山荘へ向かう
雲ノ平山荘には立ち寄らずにベンチのあるスイス庭園でティータイム、眼前には水晶岳、眼下には赤い屋根の高天原山荘を眺めながらのひとときは贅沢だ。今回は夏山だが、秋の高天原・雲ノ平は行動時間の制約はあっても、登山者も少なく気候も爽やかで一層楽しめるのではないかと思った。
薬師岳と手前に池塘群 スイス庭園から高天原方面
雲ノ平の末端は祖父岳の西側を巻く箇所、三俣山荘へは黒部源流へ下り400m 、300mの上り返しとなる。評判の三俣山荘はどんなところか興味深い。
雲ノ平末端から三俣山荘方向 黒部源流の徒渉点では飛び石で滑り右足水没
今日の夕食は三俣山荘で鹿肉を煮込んだジビエシチュー、5日間の山行の3日目にこんな料理を食べられるなんて、それもテント場を利用する登山者が山小屋で食べられるとは昔では考えられなかったことだ。13時前にテント場に到着、ここはホースから常時水が出ており、その近くにスペースを確保できた。設営した後、石橋さんと鷲羽岳を往復する。
山荘前の広場で談笑している皆さんのテンションは高い。一年のピークを夏山に設定し、晴天に恵まれ目標を達成できたからだろう。我々は山荘2階の食堂でジビエシチューを頂く。北鎌尾根を見ながら絶妙の味付けの鹿肉を楽しんだ。
三俣山荘と鷲羽岳 北鎌尾根が望める
三俣山荘名物のジビエシチュー 北鎌尾根が望めるコーナー
夜半、降雨によりテント場の小川沿いに張ったテントは、一部水没の危機に遭ったようだ。
[四日目] 晴のち曇り
三俣山荘4:30…三俣蓮華岳5:30…双六岳6:57…7:59双六小屋8:06…花見平9:00…弓折分岐9:15…大ノマ岳…秩父平…抜戸岩14:00…笠のテン場14:27(幕営)笠ヶ岳15:37
三俣蓮華岳は剣・立山方面からの主脈、白馬・鹿島槍方面からの後立山、穂高・槍から双六岳に続く交差点のため人気の山だ。三俣蓮華岳まではヘッデンを灯して上る。山頂から双六岳の間は風が吹き陽射しもガスで遮られ肌寒いが、40年以上前に歩いた微かな記憶がある。双六岳から双六小屋までの広い稜線では槍の穂先が見えた。
朝焼けは悪天の前触れか 三俣蓮華岳頂上
双六岳から笠ヶ岳 双六岳から西鎌尾根・槍
双六小屋から新穂高方面は初めて歩く。双六池を過ぎると登山者も減り道幅も狭くなる。その登山者も、新穂高へのアプローチが中京・関西圏の方が関東圏よりも便利なためか、毛色が多少違う気がする。花見平からは意外に小さな鏡池と鏡平山荘が見える。弓折乗越から下りる小池新道は悪天の際のエスケープルートとしたコースだ。
弓折乗越から左手に下りると小池新道 抜戸岩を通れば笠は近い
弓折乗越で鏡平への分岐を右に見送ると登山者はますます少なくなる。急な下りを終えると最低鞍部の大ノマ乗越、此処からまた上りが始まるが秩父平で寛ぐ。抜戸岳を越え笠新道の分岐を過ぎると特徴的な地形の抜戸岩だ。笠ヶ岳のテント場は近い。
笠ヶ岳のテント場からは、笠ヶ岳山荘への距離があり山頂は更にその先で20分は要した。水場にも距離があったが、石橋さんが三度水汲みに行ってくれ感謝の言葉以外にない。
最後のピーク笠ヶ岳では雲の合間から陽が差し長閑な一時を過ごせた。
テント場でガスの中から笠ヶ岳と山荘が現れた 最後のピーク笠ヶ岳
[五日目] 曇り一時小雨
笠ヶ岳山荘テント場4:20…5:20笠新道分岐5:30…杓子平…明るくなり雨具脱ぎ・樹林ジグザグ下降7:24…加藤さん転倒7:50頃(2000m付近)岩ゴロで滑り転倒、左額強打し出血。移動し応急手当(7:50〜8:10)荷物減らし下山…9:31林道9:35…新穂高温泉10:30
下山日の朝は何か寂しい気持ちになる。小雨模様で雨具の上を着用、笠新道の下りは人に聞くと誰もが一様に嫌がる、そんなにきびしい下りなのか。下りが得意な私としては一度歩いてみたいと思っていたところだ。抜戸岩を通り、笠新道分岐を下る。出だしは確かに急だが嫌がるほどの勾配ではない。
笠新道の下り 新穂高温泉へ蒲田川右俣谷に架かる橋を渡る
杓子平で一旦緩やかになり、標高点・2472からは急激に下り、長いトラバース、また急な下り。ここで、加藤さんが転倒し右側額に裂傷を負い出血したが、大石さんが応急処置を施し止血してくれた。ザックを軽くして落ち着いたところで、再スタート。様子を見ながらスピードを抑えて歩くことにした。林道までの時間は長かったが山道を下りることが出来、その後大町市の病院にて処置していただいた。
相原 記